飯田 恭


 

個人基本情報

氏名:

飯田 恭(いいだ たかし)

職位:

教授

研究室:

三田研究室534

略歴:

1990年:東京大学経済学部卒業

同年:東京大学大学院経済学研究科第二種博士課程入学,経済史専攻

1993-95年:ベルリン・フムボルト大学歴史学研究所に留学,ドイツ学術交流会(DAAD)奨学生

1996年:東京大学大学院経済学研究科第二種博士課程単位取得退学

1996年:東京大学大学院経済学研究科助手

1998年:成城大学経済学部専任講師

2001年:慶應義塾大学経済学部助教授(准教授)

2008年:慶應義塾大学経済学部教授

最終取得学位:

博士(経済学),東京大学,1999

受賞学術賞:

所属学会:

Arbeitskreis für Agrargeschichte,社会経済史学会,政治経済学・経済史学会(旧土地制度史学会),比較家族史学会

教育活動

担当科目(2008年度)

[通学課程]

学部:経済史I,欧米経済史,専門外国書講読(独),研究会

大学院:欧米経済史/経済史特論・社会史特論/社会学特殊研究

[通信教育課程]

 

教育方針:

        「経済史T」「欧米経済史」では,ヨーロッパ経済社会の中世以来の歴史的発展が,世界史的に見ていかに「特異」であり,また同時に「多様」であったのかを,民衆の所有・生産(労働)・生活に即して講義している。履修者の理解及びノートの速度に歩調をあわせるため,丁寧な説明を心がけ,また伝統的な「板書」にこだわっている。試験では講義内容を正確に理解しているかが問われるが,それは,履修者諸君が将来この講義内容を主体的かつ批判的に検証するための出発点を意味するに過ぎない。

        「専門外国書講読(独)」では,ドイツ語の学術文献を正確に翻訳する力を養うために,テキスト全訳の提出を求め,添削・解説の上返却している。一般の関心を引く社会科学上の諸問題に関するテキストを取り上げる。

        「研究会」では,ヨーロッパと日本を中心とした比較社会経済史の研究を行っている。輪読会を通じて履修者の問題意識を刺激する一方,履修者が各自のテーマについて時間をかけて納得の行く論文(三田祭論文及び卒業論文)を書くことを重視し,それを支援している。少人数のゼミなので,各履修者の論文を丁寧に読み,コメントすることが可能である。

研究活動

専攻・研究領域:

専攻領域:経済史・社会史,研究領域:近世・近代ドイツ農村社会経済史,日独比較農村史

現在の研究活動

研究課題名:

近世後期(16481806年)のマルク・ブランデンブルク農民生活史:ルピン郡の2所領に関するミクロ分析

途中経過及び今後の計画:

1993年に開始。ドイツ学術交流会(DAAD)奨学金によるベルリン・フムボルト大学留学(1993-95年,受入:Prof. Dr. Hartmut Harnisch),科学研究費補助金奨励研究A2000-2001年度:「18-19世紀ブランデンブルク農村下層民の定住・生活史に関する実証研究」),マックス・プランク歴史学研究所(ゲッティンゲン)における奨学金を受けた在外研究(20019月,受入:Prof. Dr. Jürgen Schlumbohm),科学研究費補助金若手研究B(20042006年度:「近世土地制度の歴史人類学的分析―日独比較の試み―」などを通じて進行。その研究成果を集大成した著書が,近くドイツで公刊される。

研究課題名:

プロイセン農民解放(19世紀前半)のミクロ歴史分析:アムト・アルト-ルピン(ブランデンブルク州)の事例研究

途中経過及び今後の計画:

2006年に開始。科学研究費補助金基盤研究C(2008-2012年度:「19世紀前半プロイセン農業改革のミクロ歴史分析」)によりつつ進行中。

研究課題名:

近世・近代の土地制度史的発展に関する日独比較

途中経過及び今後の計画:

科学研究費補助金若手研究B(20042006年度:「近世土地制度の歴史人類学的分析―日独比較の試み―」)を起点として、長期的に遂行。

主要業績:

著書(単著):

        Ruppiner Bauernleben 1648-1806: Sozial- und wirtschaftsgeschichtliche Untersuchungen einer ländlichen Gegend Ostelbiens (Studien zur brandenburgischen und vergleichenden Landesgeschichte, Bd. 3), Berlin: Lukas Verlag für Kunst- und Geistesgeschichte (in Druck).

論文(単著):

        Konflikte um 'Egalisierung' in der dörflichen Gesellschaft Ostelbiens im 18. Jahrhundert: Am Fallbeispiel des preußischen Domänenamtes Alt-Ruppin in Brandenburg, in: Jahrbuch für Wirtschaftsgeschichte 1996/2, S. 175-197.

        Hof, Vermögen, Familie 1700-1820: Die brandenburgischen Dörfer Manker und Wustrau (Kreis Ruppin) im Vergleich, in: Jahrbuch für brandenburgische Landesgeschichte, Band 49, 1998, S. 142-182.

        Wiederheiraten und Verwandtschaftsnetze auf dem unteilbaren Hof: Bauern, Büdner und Einlieger des brandenburgischen Amtes Alt-Ruppin im 18. Jahrhundert., in: Christophe Duhamelle/ Jürgen Schlumbohm (Hg.), Eheschließungen im Europa des 18. und 19. Jahrhunderts: Muster und Strategien (Veröffentlichungen des Max-Planck-Instituts für Geschichte, Bd. 197), Göttingen: Vandenhoeck & Ruprecht, 2003, S.125-155.

        「『無能な』農民の強制立退−近世ブランデンブルクにおける封建領主制の一側面−」『経済学論集(東京大学)』64-21998年,25-59頁.

        「ドイツ・東エルベの農民 16481806年−『ミクロの社会史』による多面的で多様な実像への接近−」(小特集:社会史の実証と方法)『三田学会雑誌』993号,2006年,159188頁.

        「共同体の『ゲルマン的形態』再考―静態モデルから動態モデルへ―」小野塚知二・沼尻晃伸編『大塚久雄「共同体の基礎理論」を読み直す』日本経済評論社,2007年,第5章,163187頁.

        「日本とプロイセンの土地制度史的比較をめぐる新たな論点―近世農民の土地所有に関する相違―」『歴史と経済』第199号,2008年,4554頁.

その他:

        「史料と自分−近世ドイツ農民史研究の経験から」(特集:社会史研究の現場から)『三色旗』No. 725 2008年,8-12頁.

閲覧者へのメッセージ:

専門は、17-19世紀ドイツ農村の社会経済史である。1993年秋に、ドイツの東北部に位置するブランデンブルク州ルピン地方を自らの研究の対象=拠点と定めて以来、一貫して、この地に関わる大量の史料に取り組んできた。近世後期(1648-1806年)の研究には一段落がつき、その成果は近くドイツで著書として公刊される。現在は、近代化=「農民解放」の時期(1807年以降)の膨大な史料に着手している。一地域に集中・沈潜し、そこに生きた人々の状況、経験、思考・行動様式、関係性をできうるかぎり詳細に隈なく再現する「ミクロ歴史研究」の方法を用いることで、ドイツ近世・近代史に関する、国際的にみて新しい知見を提示しつづけていきたい。ドイツは、日本が近代化を遂げるにさいして、一つのモデルとなった国である。両国の歴史的発展経路を、とりわけ近世・近代の農村に焦点を当てつつ比較することを通じて、「西洋と日本」という古くて新しい問題を探究する作業もつづけていきたい。