小室正紀


個人基本情報
氏名:
小室正紀[こむろ まさみち]
職位:
教授
研究室:
627
略歴:
東京生まれ。73年:慶應義塾大学経済学部卒業、78年:同大学院経済学研究科博士課程単位取得、79年:同経済学部助手、89年:同助教授、96年:同教授、現在に至る。この間、86年より88年、オックスフォド大学訪問研究員。2000年より01年、オックスフォド大学、フィレンツェ大学にて在外研究。
最終取得学位:
博士(経済学)、慶應義塾大学。
受賞学術賞:
2000年、『草莽の経済思想』により、慶應義塾賞を受賞。
所属学会:
日本経済思想史研究会:事務局担当幹事、同会機関誌『日本経済思想史研究』編集委員。
社会経済史学会。経済学史学会。地方史研究協議会。
教育活動
担当科目(2007年度)
[通学課程]
日本経済思想史(3、4年)、研究会(3、4年)、経済史II(1年)、経済思想の歴史II(2年)、近代日本と福沢諭吉(1、2年)、近代日本研究I(3、4年)、経済思想(大学院)、経済思想演習(大学院)。
[通信教育課程]
論文指導
教育方針:
明言できるような確固とした教育方針は無く、いまだに毎年の講義やゼミを行いながら模索を続けている。ただ、一つ言えることは、大学は各種専門学校ではなく、学問の場であってほしいと考えている。また、そこでの社会科学の勉学の目的は、第1には、事実を厳密に把握する姿勢を身につけることであり、第2には、把握した事実と事実をつなぐ論理力を磨くことであり、そして第3には、この事実と論理により、社会・人間を多面的に深く、かつ論理的・客観的に見られるようにすることだと思う。いかに、その能力を身につけるか。王道はないが、一つの良い方法は、古典と言えるような骨のある本を読むことだと、今は考えている。もし学生諸君が、大学4年間に、月1冊でもそのような本を読んだとすれば、思考能力は格段に変わるだろう。そのような方向への刺激と誘導を与えることが、いささかでもできればと思う。
研究活動
専攻・研究領域:
日本経済思想史(江戸時代から明治期まで)、福澤諭吉をめぐる近代思想史研究
現在の研究活動
研究課題名:
江戸期における都市民の経済思想
途中経過及び今後の計画:
江戸期農民の経済思想についての研究が一段落した後、現在は、この課題を考察している。素材については、従来の刊行史料のみに頼らず、新たな史料を発掘しながら、実証的に研究をすすめることを心がけている。都市商工民は、士農のように制度的に保証された「禄」を持つものではなく、資本と市場という不確実性の中に生きていた。彼等の下での市場認識とアイデンティティーの模索は、日本近代のもう一つのルーツを形成していると睨んでいる。
研究課題名:
福沢諭吉とその周辺
途中経過及び今後の計画:
2001年から03年にかけて、『福沢諭吉書簡集』全9巻を共編著した。この研究の過程で、江戸時代の経済思想と福沢諭吉の関係、福沢の思想と門下生の活動の関係などへの興味をつのらせている。現在は、一つは、19世紀折衷学の展開と福沢の思想の関係を検討している。また、福澤が実質上の主筆であった『時事新報』の経済思想を再検討することにも取り組んでいる。
主要業績:
[著書]
『草莽の経済思想―江戸時代における市場・「道」権利―』御茶の水書房、1999.2.
[単著論文]
Trends in economic thought in the Tokugawa period’, in Economic Thought and Modernization in Japan, edited by Shiro Sugihara and Toshihiro Tanaka, London (Edward Elgar), 1998.9.
「動向:日本経済思想史 江戸から明治へ―江戸時代経済思想史研究の二十年―」『経済学史学会年報』 2003.6.
「大坂両替商草間直方における「融通」」(川口浩編『日本の経済思想世界』日本経済評論社、2004.12.)所収.
「晩年の福澤諭吉―福澤書簡に見る日清戦後の世情と「老余の煩悩」―」慶應義塾経済学会ブックレット、2005.10.
「松方デフレ期における福澤諭吉の経済思想―明治一六年『時事新報』社説を中心に―」『福澤年鑑』33巻、2006.12.
「江戸時代後期の経済思想と『価原』」『日本経済思想史研究』7号、2007.3.
[共著]
『日本の経済思想四百年』日本経済評論社刊 1990.6
[編著]
『地図に刻まれた歴史と景観 明治・大正・昭和 市川市・浦安市』新人物往来社刊 1992.12
『福沢諭吉著作集 第6巻』慶應義塾大学出版会 2003.5.
[共編著]
『福沢諭吉書簡集』全9巻 岩波書店 2001.1.〜2003.1.
『福沢諭吉著作集 第3巻』慶應義塾大学出版会 2002.1.
『福沢諭吉の手紙』岩波書店(岩波文庫)、2004.4.
閲覧者へのメッセージ:
専門の日本経済思想史について:
経済についての思考は、時代の経済実態とともに、その社会特有の文化や思想からも影響を受けるものである。この経済についての思考を扱う経済思想史は、つまるところ、経済社会の中で、いかに生きるべきかを問い続けた人々の営為をたどることである。私は、江戸時代以来の伝統的経済思想と、明治以降に欧米から入ってきた「近代」経済思想との間に、出会い・反撥・融合・優勝劣敗などがあり、これらの経験を経て現在の我々があると考えている。また、この経験は、単に日本の問題に止まるわけではなく、そこには、欧米「近代」と接せざるを得なかった、多くの非欧米社会の問題が集約されているようにも思える。