宮内 環


個人基本情報
氏名:
宮内 環 [みやうち たまき]
職位:
准教授
研究室:
三田研究室623号室・内線23276・
略歴:
1984年:慶應義塾大学経済学部卒業, 88年:経済学部助手, 90年:同大学大学院経済学研究科後期博士課程終了, 92年:同大学経済学部専任講師, 93年:助教授, 98年-99年:カリフォルニア大学バークレィ校に訪問研究員として留学。
最終取得学位:
経済学修士・理論経済学・慶應義塾大学
受賞学術賞:
沖永賞(財団法人労働問題リサーチセンター)『労働市場の順位均衡』・2000年3月
所属学会:
日本経済学会, 日本統計学会, 日本国際経済学会, 環太平洋産業連関分析学会
教育活動
担当科目(2005年度)
[通学課程]
統計学I/II, 計量経済学概論, 社会科学基礎論, 研究会
[通信教育課程]
なし
教育方針:
[統計学I/II]
確率の頻度解釈を基本とした伝統的な標本理論の考え方の理解を中心に,標本抽出,母集団に関する推測と統計的仮説検定、回帰分析について講義と演習を行っている。2回の講義に対して1回程度の割合で小テストを行い,学生諸君の理解の向上を試みている。
[計量経済学概論]
観測資料発生メカニズムの概念を中心に, 構造方程式の識別, 測定のバイアス,回帰分析における統計学上の話題を取り上げて講義を行う。TSPを用いた具体例を示しながら, 問題の所在を明らかにするように試みている。
[社会科学基礎論]
自然科学, 社会科学を問わず, 科学の一般的方法について論じながら, 法則性把握には統御実験が原理的に不可欠であることを明らかにした上で, 統御実験が多くの場合に困難となる社会科学において発生する問題とその処方箋について講義する。一連の講義の最後に学生諸君に講義評価についてのアンケートをお願いしている。
[研究会]
市場機能に関する数量分析を中心に, 討論と論文作成指導を行っている。会員は各自の関心に基づいて研究テーマを選び,三田祭での研究発表や卒業論文を目標としながら,論理的思考の習慣と研究の為に必要な技術の習得を目指している。市場機能に関する理論の理解向上のために,PCを用いたグラフィカル・シミュレーションのソフト・ウェア開発も行った。
研究活動
専攻・研究領域:
計量経済学・労働市場の数量的分析
現在の研究活動
研究課題名:
労働供給スケジュール測定の計量経済学的研究
途中経過及び今後の計画:
労働供給スケジュールの測定は1970年代から、プロビット・ロジットモデルを基本とした研究から、家計の効用関数を特定化して誘導形方程式を導き効用関数パラメータを推定する研究まで幅広く行われ、多くの計量経済学的な成果が得られてきた。こうした関連研究の成果を労働供給スケジュール測定とそれにかかわる問題の観点から鳥瞰図的に整理し、従来より開発されてきたスケジュール測定の統計学的方法とそうした測定における推定量の統計学的特性に関する知見の、自律度の高いモデルへの適用を進める。
研究課題名:
雇用形態の多様化と賃金構造
途中経過及び今後の計画:
労働市場における規制緩和策の推進によって多様な雇用形態が生じつつある。「労働基準法」をはじめとする労働三法により従来では労働時間や賃金などの雇用条件に一定の規制がかけられていたが、こうした規制が緩和されることによって産業の競争力を回復することが期待されているが、その結果として生じる賃金や労働時間分布を叙述できるモデルの構築を目的としている。分析の視点は下記の著書『労働市場の順位均衡』に示された労働市場のモデルを基本としながら今後はデータの整備を進める。
主要業績:
[単著論文]
「家計労働供給の理論と検証(2)」『三田学会雑誌』96巻1号, 25-60, 2003年4月
「労働市場の順位均衡モデルにおける選択順位指標の測定 --労働供給確率関数の識別のために--」『三田学会雑誌』94巻4号,783-799, 2002年1月
「夫婦家計における連続的・非連続的就業機会選択の分析(1)」『三田学会雑誌』93巻1号,161-187, 2000年4月
「近年の労働供給分析の意義と課題」『日本労働研究雑誌』第447号, 39-51, 日本労働研究機構,1997年8月
「家計の労働供給のモデル」岩田暁一,西川俊作編『KEO実証経済学』KEOモノグラフシリーズ No.6,37-98, 1995年3月
「サービス業の投入・産出と労働需要」八幡成美編『サービス経済化の進展と労働力需要構造の変化』JIL資料シリーズ No.42, 131-191, 日本労働研究機構, 1994年8月
「家計の労働供給の分析 -- 雇用機会の諾否の選択とその確率 --」『三田学会雑誌』85巻4号,171-194, 1993年1月
[共著論文]
「回答行動の分析--調査受諾と拒否の選択行動--」『日本の家計行動のダイナミズム1KHPSの特性と住居・就業・賃金分析』樋口美雄・慶應義塾大学経商連携21世紀COE編, 2005年4月
「労働時間短縮の経済効果」『日本労働研究雑誌』No.384, 165-192, 日本労働研究機構, 1991年11月
「重層的市場均衡の概念による労働市場の分析」『三田商学研究』32巻1号, 160-192, 1989年4月
[著書]
(共著)『統計学』NTT出版株式会社:東京, 2000年2月
(共著)『労働市場の順位均衡』東洋経済新報社:東京, 1998年3月
閲覧者へのメッセージ:
慶應義塾の教育・研究をさして「実学」という言葉がよく用いられます。この「実学」とは、この学塾の開祖福沢諭吉先生が用いた言葉ですが、今日の言葉で言えば「実証科学」を意味しています。ビジネスに直結する資格の知識など、すぐに役立つ学問では決してありません。さらに言えば「実証科学」とは自然科学に限ったことではなく、社会科学や人文科学も含みます。少数個の公理から演繹される定理によって、観察される多様な現象の背後に潜在する法則を見いだし、さらにこの法則によって対象をコントロールする方法を得ようとする研究の体系全体が「実証科学」です。この点は福沢諭吉著『文明論之概略』に克明に記されています。
福沢先生が『文明論之概略』を著した時代は、幕藩体制崩壊後の混乱の中で、西欧の列強による侵略から国としての独立を維持せんがために、新たな秩序を外国の力によってでなく自前で作り出さねばならない、そんな時代でした。一方、今日の日本では、戦後の経済成長を支えた日本型経済モデルが崩壊し、一方で低くなった国境の垣根を越え、人・商品・情報が激しく行き来するようになりました。世界に目を向けると、国際連合を中心とする第二次大戦後の世界政治の枠組みが大きく変わりつつあるように見えます。今日の私たちは、そうした中で次の時代のあり方を模索しています。『文明論之概略』が著された時代と今日とはよく似ているのです。
混乱の時代にあって、科学的知識こそがより良い社会実現のための選択には必須です。この時代に立ち会う私たちには、「実学」の原点に立ち、「実学」の支持者として社会の進歩に貢献できるよう努力を重ねることが求められ、私自身もそうありたいと願っています。