鈴木 五郎


個人基本情報
氏名:
鈴木 五郎 [すずき ごろう]
職位:
教授
研究室:
来往舎 740号室
略歴:
慶應義塾大学大学院博士課程修了
最終取得学位:
MA in English (The Shakespeare Institute, U. of Birmingham;Sophia University)
受賞学術賞:
「ロータリー財団地区奉仕賞」(2003年6月11日)、「ロータリー財団地区奉仕賞」(2004年11月20日)
所属学会:
日本英文学会、日本シェイクスピア協会、ルネッサンス研究所(常任幹事・The Renaissance Bulletin 編集長)、サウンディングズ英語英米文学会(評議員)、大学英語教育学会、リアソサィアテー
教育活動
担当科目(2007年度)
[通学課程]
English Seminars on: The Merchant of Venice, Macbeth, Hamlet
教育方針:

歴史的にも国際的にも英語(the English language)の最も優れた理解者であり実践家でもあるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare 1564−1616)の戯曲作品を通して、我々自身の国際語である英語に対する理解と鑑賞能力、並びに運用能力を高めようとするささやかな試み("a tender attempt")が、担当セミナーの主たる目的である。

21世紀というダイナミックな新世紀を生き抜くために現在我々に最も要求されている資質(human qualities)は何かというと、それは各々のセミナー受講生である塾生が最高学府である大学教育を通して身に付けなければならないところのhumanism、humility、そしてhumourに収斂されるところの資質ではないだろうか。すなわち、ヒューマニズムに満ち溢れ、謙遜の美徳を兼ね備え、さらにユーモアのセンスを身に付けた懐の奥深い人間味溢れた人間に自らを陶冶(cultivate)することが求められているのである。これらの資質を身に付けるべく教室という「道場(the intellectual arena)」でお互いに切磋琢磨し、知的刺激と興奮を分かち合い、共に豊かな知性と教養を身に付けるべく最大限の努力と実力を遺憾なく発揮することこそが、本セミナーの核心部を形成する哲学であり、且つ本セミナーが究極的に志向する学習目標である。そして、それらの資質の鑑および体現者として、ルネッサンス時代における代表的劇作家であるウィリアム・シェイクスピアの登場を敢えて要請したということを強調しておきたい。

「道場」での主眼は、シェイクスピアの作品解釈と作品鑑賞を通して異文化理解(intercultural understanding)を深めると同時に、異文化コミュ二ケーション(intercultural communication)を可能なものとすることにある。より具体的には、シェイクスピアの作品を註(Notes)を羅針盤としながら丹念に読み進めること(本作業はセミナーに先行するものとする)により、例えばHamletを取り巻く権謀術数に満ちたエルシノア城内の過酷な現実やデンマークの外交および政治、占星術(astrology)、宗教論争をも孕んだルネッサンスの時代思潮などの幅広い領域に思いを馳せることによって、歴史・社会・思想・神学・哲学・言語などの領域を内包した文化的包括的文脈の中で登場人物の台詞を解釈および理解するように努めることが求められよう。シェイクスピアの自由奔放で躍動的な劇的想像力から生み出された登場人物の台詞(具体的には、"high poetry")の内実に迫り、それぞれの登場人物が織りなすところの複雑且つ微妙な人間模様を体験することによって、シェイクスピア的言語空間や演劇空間、宇宙空間を自由に飛翔することが求められよう。

昨今の慌ただしい世相のなかにあってじっくりと古典と向き合う、所謂「温故知新」の姿勢がどれほど大切なものであるのかは、敢えてここで声高に強調する必要はないだろう。逆説めいてはいるものの、古典へ没頭することによってかえって、現代に生きる我々自身の複雑な思想や感情、心理などといった目に見えないところの内面の実体と、真摯に向き合うことが可能となるからである。他ならぬ赤裸々な自分自身との対峙によって、自らを表現するためのより適切で豊かな語彙や発想、イメージなどを増幅・拡散させることが可能となるからである。すなわち、自己発見の過程こそが、みづからの感受性や言語感覚を磨く源泉に他ならないといえよう。

本英語セミナーの受講生は、異文化コミュニケーションに多大の関心と興味を抱くばかりでなく、英語が「飯よりも好き」という積極的な塾生であることを切に念願する。特に近い将来、英米加豪などの大学や大学院、研究所などに留学を計画・希望する「国際派(internationally-minded)」の塾生には、本セミナーの受講を強く勧めたい。

研究活動
専攻・研究領域:
英文学・シェイクスピア研究
現在の研究活動
研究課題名:
中世およびルネッサンスにおける歴史と伝統の継承者である劇作家ウィリアム・シェイクスピアを、研究対象としている。特にシェイクスピアの悲劇作品、とりわけ四大悲劇といわれ今日まで高い評価を受けてきた戯曲、を中心に研究を行っている。目下の研究課題は、A.C. Bradley著Oxford Lectures on Poetry (Macmillan: London, 1909)とShakespearean Tragedy (Macmillan: London, 1904; rpt., 1912)、George Puttenham著The Arte of English Poesie (Cambridge University Press: Cambridge, 1936; rpt., 1970)を味読することである。
途中経過及び今後の計画:
特に言語(language)と哲学(philosophy)の視点からの考察
研究課題名:
日本文化研究
途中経過及び今後の計画:
鈴木大拙や岡倉天心、新渡戸稲造などの著作を軸とした観点からの考察
主要業績:
(単著論文)"The Japanese Character as Reflected in Shakespeare's Great Tragedies" The Shakespeare Yearbook (Edwin Mellen Press:New York), Vol.IX, 1999.
(単著論文)「シェイクスピア」(『三色旗』、1999)、10月号、28-34。
(単著論文)「シェイクスピア」(『三色旗』、1999)、11月号、41-49。
(単著論文)「シェイクスピア」(『三色旗』、1999)、12月号、23-31。
(編集)The Renaissance Bulletin 26(Renaissance Institute: Tokyo, 1999)
(編集)The Renaissance Bulletin 27(Renaissance Institute: Tokyo, 2000)
(編集)The Renaissance Bulletin 28(Renaissance Institute: Tokyo, 2001)
(編集)The Renaissance Bulletin 29(Renaissance Institute: Tokyo, 2002)
(単著論文)「『ハムレット』への誘い」(『三色旗』、2002)、5月号、18-30。
(編集)The Renaissance Bulletin 30 (Renaissance Institute: Tokyo, 2003)
(編集)The Renaissance Bulletin 31 (Renaissance Institute: Tokyo, 2004)
(単著論文)「シェイクスピア悲劇作品『リア王』(King Lear)と岡倉天心『茶の本』(The Book of Tea)を中心に」(『三色旗』、2004)、4月号、18-39。
(単著論文)「オフィーリアの祈り」(慶應義塾大学日吉紀要 英語英米文学 NO.46 金原正彦教授追悼記念号 2005; 慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会)、177-205。
(編集)The Renaissance Bulletin 32(Renaissance Institute: Tokyo, 2005)
(編集)The Renaissance Bulletin 33(Renaissance Institute: Tokyo, 2006)
(単著論文)King Lear-centring on the theme of “Nothing”(慶應義塾大学日吉紀要 英語英米文学 NO.50 小田卓爾教授退職記念論文集 2007; 慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会)、89-112。
閲覧者へのメッセージ:
外国語学習(英語)の究極にあるものをひたすら求め続けてきた結果、Shakespeare と Holy Bible、岡倉天心、鈴木大拙、新渡戸稲造などが見えてきた。絶対矛盾の自己同一を説いた西田幾多郎も然り。西洋と東洋の歴史的出会い、対立と葛藤、そして許しと和解に至る過程の中で、異文化相互理解に対する寛容の精神が徐々に育まれ、とりわけ異質なものに対する寛大さと大らかさが生まれるようになった。自己再生(rebirth of self; self-refashioning)の物語こそが外国語学習のドラマなのではないだろうか。