林 栄美子


個人基本情報
氏名:
林 栄美子 [はやし えみこ]
職位:
経済学部教授
研究室:
日吉来往舎730号室・内線33422
略歴:
1954年:東京生まれ。77年:慶應義塾大学文学部卒業、82年:同大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。83年:慶應義塾大学経済学部助手、90年:助教授、99年:教授。1987年3月から88年9月までフランス・パリ第8大学文学部に留学。
最終取得学位:
文学修士(フランス文学)・慶応義塾大学
受賞学術賞:
所属学会:
日本フランス語フランス文学会
教育活動
担当科目(2007年度)
[通学課程]
フランス語、自由研究セミナー(写真への接近)、表象文化論
教育方針:
  • フランス語については、ほとんどの学生が初めて学ぶ外国語なので、各々がすでに持っている英語などの語学力を援用できるような、論理的で明確な説明を心がけている。また、読む・聞く・話すの能力をバランスよく獲得していくことが出来るような練習をさせる。
    授業時間内に学んだことは、なるべくその時間内に理解し実際に使えるよう、説明のあとは、すぐに実際に問題をやってみる。「わからない」と簡単にリタイアすることは認めず、自分の理解度を自分で検証させ、解答に導くように、辛抱強く対応する。
  • セミナー形式の授業では、自分で考え、自分の意見をはっきり述べつつ、他人と意見を交換するよう常に求める。自分のいる場所を活性化させるべく、自らが積極的に参加していくよう促す。そのための場と雰囲気の作り方、モチベーションの導き方を、教師の側も一緒になって模索し続けている。
  • どの授業においてもそうだが、とりわけ総合教育科目を担当するときには、何よりもまず、学生がその分野に関心と興味を持つことができるよう、彼らの興味のテリトリーとリンクする幅を持てるようにし、個々人が興味のアンテナの数を増やし、感度を上げることができるような内容にするべく努めている。
研究活動
専攻・研究領域:
(フランス)現代文学、写真史・写真論
現在の研究活動
研究課題名:
「ヨーロッパ20世紀小説」という視野におけるフランス現代実験小説の再考
途中経過及び今後の計画:
フランス文学で20世紀半ばから終わりにかけて現れた、「ヌーヴォーロマン」と総称される新しい小説の試みとは何だったのかを、今再び捉え直すためには、フランスという一国や1950年代というような短い期間に限ることなく、「20世紀小説」、あるいは少なくとも「ヨーロッパ20世紀小説」という視野を獲得しなければならないと思われる。英独仏の文学史に20世紀初頭から登場するよく知られた文学的現象をリンクさせてみるばかりでなく、といわけ今まで看過されがちだった、西ヨーロッパ以外の国々、すなわち中央・東・北ヨーロッパ諸国の20世紀小説を考察の対象に入れることを忘れてはなるまい。そうしてみると、文学は美術などと違って、言語のみを素材とするものであるために、言語が壁となって、このような当然あるべき視野をなかなか持ちえなかったことに気づかされる。とりあえず身に付けてみたその視野のなかで、20世紀の苛烈な歴史から生まれた多くの「亡命作家」や「多言語作家」たちの営為が、改めて魅力的な研究対象として浮かんできたところである。
研究課題名:
フランス語で書くことを選び取った現代作家たち
途中経過及び今後の計画:
現代のフランス文学を活性化させている大きな要素として、フランスに亡命してフランス語で作品を書くことを選んだ(主に東欧出身の)作家たち、あるいはフランス共和国の海外県であるマルチニックなどのクレオール文化圏出身の作家たちの存在があることに注目せざるを得ない。
彼らの作家としての存在の在りようと、フランス語で作品を書くこととの関係を、個々の状況の諸側面から探り、そこに立ち現われてくる、きわめて現代的で、あくまでも文学に固有な問題を考察していく。
研究課題名:
写真は人間に何をもたらしたか
途中経過及び今後の計画:
19世紀半ばに、人間が初めて写真という映像を手にして以来、写真はまたたくまに世界に氾濫し、映像として様々な発展・変容をとげ、多様で無数の映像が人間の現実を侵食してきた。
そのことの重大さを十分に感じないままに、人間の現実認識は、映像によって大きく変わってきたはずである。その経過を、写真・映像の歴史として検証しながら、写真は人間に何をもたらしてきたかを、できるだけジャンル横断的に考えていく。写真を結果としての映像だけからでなく、「写真を撮るという行為」としても捉えるというスタンスを持ちたいと考えている。
研究課題名:
想像力空間における闘牛
途中経過及び今後の計画:
スペインの闘牛が、文学、美術、映画、写真、音楽、演劇などの創作者たちに、いかなるインスピレーションを与え、それらの分野でどのように作品として結実し、受容されてきたかを追跡し、研究する。広く資料を収拾することから始め、その作業は常に継続しながら、個々の作品、作家について考えていく。作品間の相互影響についても目配りをしていく。
主要業績:
単著論文:
「ミシェル・ビュトールにおけるパリ あるいはパリ変奏曲」、『日吉紀要・フランス語フランス文学』 第10号、1990年
「都市と写真−1900〜1930年代−」、「日吉紀要・言語・文化・コミュニケーション』 第7号、1990年
「『トランジットA−トランジットB(土地の精霊IV)』をめぐって」、『日吉紀要・フランス語フランス文学』 第18号/20号/22号、1994/1995/1996年
「ビュトールの『ピカソ=迷宮』 およびその転生」、『日吉紀要・フランス語フランス文学』 第29号/30号/31号、1999/2000年
「翻訳:ミシェル・レリス作『闘牛』」、『日吉紀要・フランス語フランス文学』 第34号/35号、2002年
「現代小説としての『テキサコ』」、『日吉紀要・フランス語フランス文学』 第43号、2006年
編著書:
『砂の上の黒い太陽――〈闘牛〉アンソロジー』(編・一部訳)、人文書院、1996年
閲覧者へのメッセージ:
現在の研究課題のなかで、教育の現場に一番反映させているテーマは写真です。私は長年、経済学部の「自由研究セミナー」という少人数の講座を、「写真への接近」というテーマで続けています。だれもが体験的に知っている写真というものに、改めて意識的に近づいてみること――撮影し、考え、他人と見せ合いつつ意見交換する――、そうした作業を通して、未知の自分を発見し、他人と新たに出会い、「写真の力」の広がりと深さ を感じ、考えてみることは、なかなかに刺激的な体験だと思います。オムニバスの表象文化論でも、写真と映画の黎明期をとりあげています。20世紀に入る前に、初めて映像を手にして以来、人間の現実認識は、大きく変わったはずです。そのことの重大さを十分に感じないまま、人間は大きな曲がり角を曲がってしまったのです。
私の元々の専攻領域である現代フランス文学については、最近では2004・5年度に文学部フランス文学科で講義をしましたが、日吉の授業でも機会があったらフランスに限定せずに「現代小説」の話をしてみたいと思っています。